漫画家の手塚治虫氏の作品の中でも、その宇宙的なスケールとスピリチュアリティでライフワークといわれた長編作「火の鳥」をモチーフにしたオリジナルミュージックアルバムが10月24日に発売になります。
今週はこのアルバムのことをご紹介させてください。
タイトルは「Phoenix」。アーティストは日本のパーティシーンでもなじみ深いイギリスのグループSYSTEM7です。
早速サンプル盤を聞かせてもらったのですが、ポップでダンサブルでスペイシーな広がりのあるナイスなアルバムに仕上がっていました。
このアルバムが制作された経緯については発売元のWAKYOのウエブサイトに詳しいので抜粋して転載させていただきます。
以前よりSYSTEM 7の作る音には、手塚治虫の『火の鳥』に描かれる世界観に通じるものがあると感じていた手塚治虫氏の長女・手塚るみ子(Music Robita) は、 2004年に彼らが来日した際、『火の鳥』の英語版『PHOENIX』をプレゼントし、以来彼らの交流が始まる。
SYSTEM 7はその物語に深く感銘し、PHOENIXの各物語から得たインスピレーションをもとにアルバム制作をしたいと考え、手塚るみ子のコーディネイトのもと、今回のアルバム制作が実現した。
アルバム・ジャケットには、手塚治虫の描き下ろした原画"REINCANATION"が、グラフィックアーティスト安東茂樹のCGによってリメイクされる。
楽曲においても、あの70年代にプログレ・ロックシーンを共に築き上げたGONGの盟友・DAEVID ALLENをはじめ、日本より CLAMMBONのベーシスト・MITO、EAT STATIC、SON KITE、JAM (JAM & SPOON)など、SYSTEM 7と交流の深いアーティストとのコラボレーション曲が収録されている。。。
内容的にも申し分のないこのアルバムですが、プロデューサーの手塚るみ子さんにとってはこのアルバムが完成するまでには実は長きにわたるヒストリーがありました。
手塚さんプロデュースによる鉄腕アトムをモチーフにしたアルバムのことをご紹介した2003年の3月21日付けのコネクテッドメールニュースからの引用です。
「ところで「火の鳥」は、というと最近ようやく英訳が発刊されたそうです。
まだ一冊目が出たばっかりなのだそうですが、手塚さんはその訳本をジェフミルズなどに渡して読んでもらってるのだそうです。
私はとっても素敵なことだと思いました。いままで絵でしか海外に伝わってこなかった手塚漫画の世界が、これからはジェフのようなアーティストから哲学をもって世界に語り継がれていくんです。
日本的なスピリットを世界に伝えるということを考えたときに、このやり方は超ナイスなのではないでしょうか。サブカルチャーから伝わってくるものこそ信じられるって思うのは日本も海外も同じですもんね。
時間がかかっても着実に受け継がれていくもの、浸透していくものってあるんだと思ったんですよ。」
手塚さんが英語版が刊行されて以来地道に海外アーティストとの交流を重ねていってついにSYSTEM7という最高の理解者に出会ったということがうかがい知れると思います。
そして、さらにこの3月21日付けメールニュースから引用させて頂きます。
「何年前だったでしょうか。飯倉のラフォーレで、たしか「メイド インヘブン」という名のパーティがありました。3000人くらいの大入りになったのですが、そこで我々はアナーキックアジャストメントというサンフランシスコのストリートブランドのTシャツを売ってたんです。
その中にメルモちゃんのTシャツがあったのですが、会場には手塚治虫さんのお嬢さんのルミコさんがきていて、当然アメリカでは使用許可なんか得てないものですから、みつかっちゃったんです。
で、その場は事情を話してなんとか大目に見てもらえることになったのですが、そこから話は進展して97年にはレインボー2000という、いまや伝説化してしまったレイブのTシャツとして「火の鳥」をモチーフに使わせてもらえることになったりしたんです。」
という一件がありましてですね。実はコネクテッドとしての最初のオリジナルTシャツは手塚さんの尽力による97年のレインボー2000オフィシャルTシャツ「火の鳥」であり、その時と同じ原画"REINCANATION"が10年後再び「Phoenix」のアルバムカバーとして復活したというわけなのです。
オリジナルの「火の鳥」は1954年以来30年以上にわたって書き綴られた未完の超大作ですが、私はこのアルバム「Phoenix」に出会って、90年代以降もウエアやミュージックアルバムなど形態すら変えながら、海外のアーティストにまでトランスレートされて続いているのだということに感動しました。
るみ子さんの長年にわたるポジティブでクリエイティブな活動に心からリスペクトを捧げたいと思います。
システム7「Phoenix」ツアー情報
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