今週は、久しぶりに豊富な品揃えで商品が入荷してきたヒマラヤンマテリアルの遠藤昭一さんにお話をうかがいました。遠藤さんは、昨今のようなヘンプブームが起きるはるか以前からこつこつとヘンプ製品の生産し、そのよさを伝えてきた草分けのようなお方です。 ― ヒマラヤンマテリアルはいつごろはじめられたんですか。 「97年の4月にスタートしたからそろそろ10年になるかな。最初にヘンプ素材に出会ったのはその前の年に旅行に行ったことがきっかけだった。もともと旅好きでいろんな国にいってる中でひっかかった国がネパールで、雑貨とか手仕事が好きだから自分自身でもやってたんだけど、ネパールの雑貨屋さんで出会ったのがヘンプの手編みの帽子だった。それをお土産で買ってきて回りの友達とかにあげてたら評判で、使ってても気持ちがいいし、自分でも好きなものだったんでね。その延長線上で作ってもらったりしてるうちに仕事としてつながってきたんです。」 ― 最初にヒマラヤンマテリアルを立ち上げたときの軸になっている要素は何だったのか教えていただけますか。 「大事にしてるのは手仕事の部分、それもその場にある技術、昔から伝わっている技術、その村の人とかそこに住んでる人達が生活の中で使ってる材料に、自分自身の目で見て自分が使いやすいようなデザインをしてもらったりしている。あと、自然素材、その場にある天然素材由来のもので手仕事をするということが一番中心になるので、名前にもマテリアルという言葉を使っている。素材そのものが一番大事だと思う。」 ― そこで中心的にきたのがヘンプだったわけですね。 「そう、ヘンプはネパールに限らず、日本でも昔から身近な存在であって、場所とか時代とかが変わっても生活の中に必ずあった。ネパールに関していえば山の暮らしのなかで使ってた素材で、マガール族という人たちがいて西ネパールに住んでいるのだけれど、そのマガール族の伝統的な民族衣装がヘンプで織られたブランケットだったんです。コードバインディングリュックはその生地を使ってリメイクしたものです。ストライプの入ったブランケットが元。ストライプ自体もその場にある素材、ヤクの毛なんだよ。日本語いうと毛長牛というんだけど、これでロープを作ったり、デザイン代わりに生地にラインを入れたりしてるんだよね。ミルクを絞ってそこからチーズを作ったりとか、肉はおいしいし。。。」 ― すみずみまで利用されているということですね。 「そう、ヘンプ自体も4メートルから5メートルに成長するからその茎を薪代わりにして火をたいたり、種は食用にしたり、葉は嗜好品として使われたりして、繊維はこういったものとして服や小物になる。」 ― ヒマラヤンマテリアルとして出しているものはネパールの人たちが使っているものに限りなく近いということなんですか。 「使ってる素材は現地にあるものの応用です。例えばリュックに使われてるコードは細いんだけど、もともとはロープを作る技術を応用していたりとか、マクラメの網は魚を獲るための網の技術を応用だったりというのもありますね。」 ― おおっ、それはすごい。魚の網ですか。 |
ネパールには毎年行ってるのですか。 「はい、最近は1月から3月にかけての冬の時期にまとめていくことが多いですね。最初にする作業はまず素材集めです。いい素材をとりまとめて、また新しい素材が手に入ったときには次何を作ろうかと考えることもあります。」 ― 向こうの職人さんたちとももう10年近い付き合いになるんですよね。 「そうですね。ずっと同じ人とお付き合いをしているから、すべて顔の知ってる人たちとしか仕事してないです。」 ― すごいですね。それだけ長くやっていると絆ができているでしょ。 「そうですね。仕事だけって感じじゃないですね。すべて誰が作ってるか顔がわかってますしね。」 ― それだけ長く作り続けられてきている原動力になるものは何なんですかね。 「単にやっぱり好きだからということしかないよね(笑)。そこでつくってきたものがまたお客さんの手に渡って喜んでもらえたりするとやりがいを感じるというか、こちらもうれしいしね。商品を最終的に買ってくれる人がいるので、自分なんかも含めてそこに携わっているすべての人が回っていけるということがハッピーですね。リュックひとつにしても販売する人とか、デザインする人とか、パーツを作り人がいますよね。一人一人がお客さんの手に渡ることによって仕事になって生活ができてということで手仕事がぐるりと回っている。あえてスローファイバーという言い方をしているんですけどね。すべて手作りのもので昔からあるものということで。。」 ― なるほど。昔からあってその土地のもので手で編んでいるから時間をかけて作られているということですよね。ところで、ヘンプをはじめられたころと今では、状況がずいぶん変わってきてるのではないですか。 「そうだね。始めたころはガンジャで出来ているということが珍しがられて買っていく人が多かったんだけど、今ではもう普通に着心地がいいとか気持ちいいとか、実感を元に買っていく人が多い。ガンジャとかよりも出来上がった商品そのものに興味のある人が多い。」 ― やはり本質的なものが伝わっているということですね。そのためにヘンプとは何かということを伝えることもやられてきたんですよね。 「活字の情報が前に来るというよりは実際に使ってみたりという実感を伝えるということのほうが、、、触って気持ちいいとかね。」 ― その実績を重ねてきたということなんですね。 「固定のファンの人が少しづつ増えてきたおかげで何とか続けられています。気持ちとか手をこめて作ったものには、そういう気持ちが宿るというのがやっていて実感あります。大量生産のものとの違いはそこじゃないかな。モノそのものにも物語があって伝わっていくんだなあって。バッグという物理的なものをひとつとっても、これそのものがオーガニックな存在だというのが感じるところです。」 |
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